無線LAN機能をマイコンで実現、全て搭載してRAM256Kbyte「デフィブリレータ EMS-1052 カルジオライフEMS」(日本光電工業株式会社様 採用事例)
日本光電工業株式会社
事業内容 | 医用電子機器および関連したシステム・消耗品類の開発・製造・販売・保守サービス・コンサルテーション等 |
導入した製品 | デフィブリレータ EMS-1052 カルジオライフEMS |
購入した製品 | μC3/Compact、μNet3-Professional、μNet3-SSL(現在はμNet3-TLS)、μC3-WLANドライバ |
CPU | STM32F4 |
今回は日本光電工業株式会社様の事例をご紹介します。
同社は、最先端の技術と製品で世界中の医療現場を様々な方面からサポートされています。この度、日本でAEDを開発されている同社の、「デフィブリレータ EMS-1052 カルジオライフEMS」に弊社製品を採用していただいたため、採用前の課題や効果をお伺いしました。
課題
マイコンのコンパクトなメモリで、無線LANなどの無線機能とセキュリティ機能を実装すること
採用の決め手
導入を決めた国内モジュールメーカの無線LANモジュールのドライバを柔軟に開発してくれた
効果
μC3-WLANドライバ、TLS、HTTP、E-mail機能、Bluetoothを搭載してメモリサイズ256Kbyteを実現
導入OSは安定稼働が当たり前、フットワークが軽い国内製品を採用
――今回の「デフィブリレータ EMS-1052 カルジオライフEMS」に導入される前から弊社のμC3を使用していただいておりました。μC3を初めて導入した経緯を教えてください。
イー・フォース社の製品は「デフィブリレータ TEC-5600シリーズ カルジオライフ」から採用しています。以前は、海外製のRTOSを使用していましたが、別の部署で利用していたことがきっかけでμC3を知りました。
サポートが必要な際は国内ベンダーの方が対応のフットワークが軽いと考え、国内で製品を探していました。また、当初STM32に対応した国内OSは限られていましたが、イー・フォース製品が対応していたため採用し、それ以降の全ての除細動器製品の開発に使用しています。
――製品の概要について 教えてください。
イー・フォース社の製品を導入した「デフィブリレータ EMS-1052 カルジオライフEMS」はμC3/Compactと無線LAN機能、TLS、HTTP、E-mail機能、Bluetoothを搭載した除細動器です。除細動器とは心臓に電気的な刺激を与えることで致死性の不整脈を正常なリズムに戻すための医療機器です。こちらの機器はAED機能の他、マニュアル除細動機能も搭載しています。また、こちらの製品には心電図やSpO2などのモニタリング機能も搭載しています。心肺停止後1分経過するごとに生存確率は10%ずつ低下してしまうため、素早く起動し、除細動を行えることが重要です。
――他社OSからμC3への移行は苦労されましたか?
以前使用していた海外製のRTOSと異なっていたのは、呼び出している関数名が異なる程度でした。弊害なく使用でき機能的にも変わらず、OSを変更したことによる問題はありませんでした。
導入前
購入前に製品版μC3で性能評価を実施
高性能なRTOSを利用し、アプリケーション開発のリソースを減らすという考え方もありますが、高性能RTOSになると多くのROM容量が必要になってしまいます。UIも含めた様々な機能を考慮する中でROM容量の議論は避けられませんでしたが、イー・フォース社のμC3はアセンブリレベルでROMサイズの最適化がされていました。
――他社製品の採用も検討されていましたか?
他社の無線LANモジュールとドライバを検討していましたが、コストやサイズの条件が合いませんでした。開発当時はイー・フォース社にμC3-WLANドライバはありませんでしたが、相談したところ協力的に開発していただけました。
――μC3/Compactはどのような機能を制御していますか?
いくつかCPUを搭載していますが、除細動器の機能、画面表示、データ取り込み、心電図解析機能などコアとなる部分をマルチタスクで制御しています。無線LANモジュールはなかなか決まりませんでしたが、最終的に国内モジュールメーカの無線LANモジュールの採用を決めました。その後イー・フォース社に開発してもらったμC3-WLANドライバと、連携して利用可能なネットワーク製品μNet3も購入し、シームレスに使用しています。
無線LAN機能の搭載にあたって
――無線LAN機能が必要になった理由を教えてください。
除細動器からのデータを病院に送る必要があったため、無線LAN機能が必要でした。「デフィブリレータ EMS-1052 カルジオライフEMS」は救急車に載せて使用しますが、救急車が病院に到着する前に病院にデータを送信できるようにしています。また、今回はセキュリティ面も考慮し、TLSを搭載し暗号化してデータを送信しています。
導入後
――製品で使用している無線LAN機能について教えてください。
現在の機器では2.4GHzと5GHzの無線LANを搭載しています。無線LANとBluetooth機能の実装が必須要件でしたので、Bluetoothで利用している2.4GHzと干渉しないよう、5GHzも搭載しています。胸骨圧迫をサポートする弊社製品は除細動器とBluetoothで接続をしており、除細動器側にデータ転送ができます。
細かいネットワークの設定に合わせて、OSの設定も柔軟に変わる
ネットワークの通信速度を重視しすぎると、メモリ領域を多く使ってしまい動かなくなってしまいます。製品に付属のコンフィギュレータからネットワークの設定に加えて、使用するメモリサイズを細かく調整できるのが良かったです。
――厳しいメモリの条件は達成できましたか?
無線LANのネットワーク専用CPUではRTOSとμC3-WLANドライバ、TLS、HTTP、E-Mailの機能、Bluetoothの機能も載ってRAMサイズ256Kbyteでした。最終的に、厳しいメモリ要件を満たすことができました。
やりたいことが実現できるまで対応する保守サポート
――保守サポートの対応はいかがでしたか?
サーバへのデータアップロード機能のために購入したμC3-WLANドライバ、HTTP、TLSの制御方法がわからず、保守サポートに問い合わせをしました。また、一緒に開発してもらった無線LANドライバでは、機器から接続ができない無線LANルータが見つかった場合、イー・フォース社で同じものを購入しデバックをしていだきました。問い合わせ後1日-2日程度で対応をしていただき、やりたいことが実現できるまでサポートをしてもらいました。海外製品の保守サポートの場合、間に代理店が入るケースもあり意思疎通が難しく時間がかかってしまいますが、イー・フォース社は技術者と直接やりとりができます。これが国産メーカーの強みだと思います。
また、当初μC3-WLANドライバは5GHz帯の設定が日本とヨーロッパにしか対応しておりませんでした。しかし、弊社の製品をアジア・中東・南米などの国々で販売するためには、各国の電波規制に合わせた設定が必要でした。そのため、設定を柔軟に変更できるように依頼し迅速に対応していただいたおかげもあり、全世界で販売ができております。
ソースコード提供で、ブラックボックスにならない開発工程
ネットワークで問題が発生した際、ソースコードがないと起きている事象を事実ベースで考えることしかできず、下回りのデバッグができません。しかし、イー・フォース製品はソースコードも一緒に提供していただけるため、デバッグと同時にソフトウェアの品質も確認できました。また、無償で提供されているEWARM版のプラグインを利用することで、EWARMからμC3のOSのステータスの確認ができるためOS関連のデバッグがしやすかったです。
無線LANの導入を検討されている方へ
Linuxでも無線機能の実現は可能ですが、イー・フォース製品を使うことでマイコンの限られたメモリリソースで、Bluetoothも無線LANも実装できるためハードウェアコストを削減できると思います。また、オープンソースのLinuxの場合、脆弱性が見つかった際はパッチを当てる必要がありますが、イー・フォース社は自社でスクラッチ開発をされているため、セキュリティ面でも安心ができると思います。
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